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ニュースレターNo.2 「組成物実施例の書き方 No.2」

<概要>

前回は、二成分系及び三成分系組成物に関する実施例及び比較例について検討してみました。
今回は四成分系以上の組成物に関する実施例及び比較例をどのように記載すべきかについて検討してみたいと思います。
四成分系組成物の発明に関して、特許請求の範囲に該組成物発明を如何に表現したらよいのかが、まず問題になります。
第一に、「成分A、成分B、成分C及び成分Dを含む組成物」と言う記載が考えられます。
この記載形式は、夫々の成分に関する配合量の限定もなく、非常に広い範囲をカバーする記載になっています。従って、一見優れた記載形式であるかのようにも思われます。しかし、この記載形式が認められるなら、何の苦労も要りません。この記載形式によれば、成分A、成分B、成分C及び成分Dのいかなる配合量においても、所期の効果を達成し得ると言うことになります。そのようなことはまずあり得ません。このような記載形式は、余程斬新な組成物でもない限り、殆どの場合に認められません。

とりあえず、このような広い範囲の請求項を記載しておけば防衛的な意味があるので、特許請求の範囲に記載しておきたいと言うことをしばしば耳にします。しかし、防衛的な意味であれば何も特許請求の範囲に記載する必要はありません。まして、出願審査請求などする必要はないのです。お金をドブに捨てるようなものです。

(2) 第二に、上記記載において配合量を限定することが考えられます。例えば、「成分A: 10〜30質量部、成分B: 15〜30質量部、成分C: 18〜30質量部及び成分D: 20〜30質量部の合計100質量部を含む組成物」と言う記載が考えられます。
この場合、どのような実施例及び比較例を記載したらよいのでしょう。まず、最良の結果を生ずる実施例として、例えば、成分Aが22質量部、成分Bが24質量部、成分Cが26質量部、成分Dが28質量部である組成物(成分A、B、C及びDの合計が100質量部)を挙げたとします。ここで、該組成物の効果に対する成分C (特徴成分) の配合量の影響を明らかにしたいと考えます。果たして、如何なる実施例及び比較例を挙げればよいのでしょうか。例えば、成分Cの配合量を下限値の18質量部にして、成分Cが該組成物に与える効果を明らかにしたいとします。しかし、成分Cの配合量のみを変えることはできません。従って、同時に他の成分の配合量も変えなければなりません。即ち、成分Cの配合量のみの影響を明らかにすることができないのです。他の成分についても同じです。
従って、実施例及び比較例は、全体として請求項の記載の範囲内にある組成物と請求項の記載の範囲内にない組成物とを、ただ漫然と記載しなければならなくなるのです。実施例及び比較例相互間の比較ができないのです。
と言うことは、そもそも「成分A: 10〜30質量部、成分B: 15〜30質量部、成分C: 18〜30質量部及び成分D: 20〜30質量部の合計100質量部を含む組成物」と言う請求項の記載形式自体に問題があったと言うことではないのでしょうか。
(3) 4成分系組成物の発明の場合に、4成分の全ての配合に関して新規性、進歩性を有していると言うことは殆んどありません。もし、4成分の全ての配合に関して新規性、進歩性を有しているなら、これらのうちの2成分系及び3成分系組成物についても新規性、進歩性を有していると言え、そもそも4成分系組成物として請求項に記載したこと自体が間違っていたことになります。

殆どの場合、成分A及び成分Bを含む組成物は公知であるが、これに成分C及び成分Dを含めることによって新規な組成物を得た、又は成分A、成分B及び成分Cを含む組成物は公知であるが、これに成分Dを含めることによって新規な組成物を得たと言うものです。
従って、請求項の記載は「成分A及び成分Bを含む組成物において、更に成分C及び成分Dを含むことを特徴とする組成物」又は「成分A、成分B及び成分Cを含む組成物において、更に成分Dを含むことを特徴とする組成物」と言うような表現になるのが普通です。
上記(1)又は(2)に記載した請求項を思いついたなら、本当にそれでよいのかと、今一度、じっくりと考え直す必要がありそうです。そもそも、上記(1)又は(2)の記載形式は、何が発明の特徴であるかを的確に表現していない、良くないクレームの代表例であることを認識すべきなのです。
4成分系組成物の発明に関して、「成分A及び成分Bを含む組成物において、更に成分C及び成分Dを含むことを特徴とする組成物」又は「成分A、成分B及び成分Cを含む組成物において、更に成分Dを含むことを特徴とする組成物」と言うように請求項が立てられたなら、後は、2成分系、3成分系の要領で実施例及び比較例を記載すればよいのです。
例えば、「成分A:20〜80質量部及び成分B:80〜20質量部の合計100質量部を含む組成物において、成分A及び成分Bの合計100質量部に対して、成分C:50〜100質量部及び成分D:100〜150質量部を更に含むことを特徴とする組成物」と記載したとします。
この場合、最良の実施例として、成分Aが50質量部であり、成分Bが50質量部であり、かつ成分Cが70質量部であり、成分Dが130質量部である組成物を挙げたとします。成分Cの配合量の影響を明らかにするには、成分A、成分B及び成分Dの配合量をそのままにして、成分Cの配合量のみを変えればよいのです。他の成分に関しても同じです。
(4) このように4成分系組成物に関しては、まず、請求項の記載形式に注意しかつ工夫することが必要なのです。それにより、有効な実施例及び比較例を記載することができ、サポート要件違反を的確に回避することができるのです。5成分以上の場合も同様です。


2. 次に、補正が新規事項の追加に該当するか否かについて、簡単な例を挙げて説明してみたいと考えます。

今、特許請求の範囲に「成分Aを40〜60質量部及び成分Bを60〜40質量部含む組成物」と記載されていたとします。そして、当初明細書の発明の詳細な説明には、「成分Aとして、例えば、a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8、a9、a10等が挙げられ、かつ成分Bとして、例えば、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b8、b9、b10等が挙げられる」と記載されていたとします。但し、成分A及びBに関して、上記のように下位概念のa1〜a10及びb1〜b10が列挙されているだけであり、例えば、「これらa1〜a10及びb1〜b10は単独で使用してもよく、また、複数組み合わせて使用してもよい」等の記載はされていなかったとします。
このとき、特許請求の範囲を「成分Aを40〜60質量部及び成分Bを60〜40質量部含む組成物」から「a1及び/又はa2を40〜60質量部並びにb1及び/又はb2を60〜40質量部含む組成物」に補正したとします。この補正は、適法であると考えますか、それとも新規事項の追加に該当し認められないと考えますか。現に、新規事項の追加に該当すると言う拒絶理由を受けたとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
該補正が新規事項の追加に該当するなら、その根拠は何でしょうか。多分、「これらa1〜a10及びb1〜b10は単独で使用してもよく、また、複数組み合わせて使用してもよい」等の記載がないことを根拠としていると考えます。発明の詳細な説明には、a1〜a10及びb1〜b10が単に列挙されており、これらを単独で使用し得ることは記載されてはいるが、組み合わせて使用し得ることは記載されていないと言う理由だと考えます。しかし、この理由付けは余りにも機械的過ぎるとは思いませんか。「又は」については記載されており、「及び」については記載されてないとする根拠はどこにあるのでしょうか。発明の詳細な説明には、「又は」についても「及び」についても記載されておらず、単に下位概念の物質が列挙されているだけなのです。
特許請求の範囲に「Aを40〜60質量部及びBを60〜40質量部含む組成物」と記載されているときに、成分Aとして、a1とa2とを夫々25質量部ずつ含み、かつ成分Bとして、b1とb2とを夫々25質量部ずつ含む組成物があったとします。この組成物は、この特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲に含まれると考えますか。普通、当業者なら技術的範囲に含まれると答えると思います。その根拠として、特許請求の範囲に記載された成分A及び成分Bは、夫々、下位概念のa1〜a10及びb1〜b10を単独で含んでもよいし、また、これらを複数組み合わせて含んでもよいと言うことが存在するからだと考えます。そして、そう考えるのが自然であると思います。
上記のように「及び」が新規事項の追加なら、即ち、a1〜a10及びb1〜b10を夫々単独で含む組成物しか含まないと考えるなら、成分Aとして、a1とa2とを夫々25質量部ずつ含み、かつ成分Bとして、b1とb2とを夫々25質量部ずつ含む組成物は、特許請求の範囲に記載された「成分Aを40〜60質量部及び成分Bを60〜40質量部含む組成物」と言う発明の技術的範囲に含まれないことになります。どのような理由付けになるのでしょうか。当初明細書の発明の詳細な説明には、「これらa1〜a10及びb1〜b10は単独で使用してもよく、また、複数組み合わせて使用してもよい」と記載されていない。従って、a1とa2及びb1とb2を組み合わせて使用することは記載されていない。従って、成分A及び成分Bは、a1〜a10及びb1〜b10を単独で使用する場合のみを含む。故に、単独では、a1とa2及びb1とb2は、夫々、25質量部ずつだから、発明の技術的範囲に含まれないと考えるのでしょうか。これは非常に無理のある議論であると考えます。
審査基準も「新規事項」の解釈が余りにも機械的過ぎたため、少し前に改訂されています。即ち、当初明細書に記載されている事項のみならず、当初明細書の記載から自明な事項も含まれることを明記しています。上記のような場合には、明らかに、成分A及び成分Bについて、a1〜a10及びb1〜b10を単独で含む場合及び複数組み合わせて含む場合の両者を含んでいると考えられます。そもそも、「これらa1〜a10及びb1〜b10は単独で使用してもよく、また、複数組み合わせて使用してもよい」と言う記載は、上記のような誤った解釈がされるのを防ぐために、確認的に記載しているに過ぎないことなのです。それを逆手にとって、この記載がないことを理由に、複数の組み合わせは記載されていないと考えること自体、大きな間違えであると考えます。

以 上

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